ポリオ不活化ワクチン



2012/04/29 現在

以下の内容を良くお読みになって、自分のお子さんに不活化ポリオワクチンを接種するか否かをご検討ください。
なお、不活化ポリオワクチンはこの秋以降定期接種として生ワクチンから切り替えられることが確定的です。
今後の新しい情報によって、記載内容を随時アップデートしていきます。
読まれる時期により微妙に表現が変わっていくことをお許しください。


1.ポリオウイルスの感染とそのワクチンの概要
 ポリオウイルスは口から入り、のどや腸のリンパ節で増殖して後に血中に入り、脊髄などの運動に関係する神経に入り、小児麻痺を起こすものです。 ただ、感染すればすべて小児麻痺となるわけではありません。 感染者の90〜95%は外からは全く症状がなく(不顕性感染といいます)、それ以外もほとんどは発熱・頭痛などの症状で終わります。 しかし、0.5〜2%では典型的な麻痺を起こします。
 日本国内においては第2次世界大戦後も小流行が続いていましたが、昭和35年頃に大流行となりました。 その際に当時のソ連およびカナダから超法規的に緊急輸入した生ワクチン、その後実用化された国産の生ワクチンにより流行は急速に収まり、 現在では日本国内では新規の患者さんは発生しなくなりました(こちらも参考に)。 ただ世界的にはまだポリオは流行している地域があり、ワクチン接種を怠るとまた流行するという事例があります。 このため、まだワクチン接種をやめられる状況ではありません。 しかし、患者さんの発生がない状況下で目立ってきたのはポリオ生ワクチン(OPV)によるウイルス関連性ポリオ様麻痺(VAPP)という副作用です。
 OPVにより世界では毎年40万人もの子どもたちがポリオ罹患から救われているといわれている一方、OPV投与200〜300万人に1人の割合でVAPPが出現しています。 米国では、初回接種で78万投与あたり、2回以降接種では600万投与あたりそれぞれ1例、我が国では400万投与あたり1例のVAPPがあり、 1981〜2000年の間に国内で15例が報告されています。 接種者周辺における感染(vaccine contact case:VCC)も米国で640万投与あたり、我が国では530万投与あたりそれぞれ1例みられています。 野生株(自然に流行しているポリオウイルス)によるポリオ患者が多い時代には VAPPやVCCが極めて稀に発生したとしてもrisk(危険性)とbenefit(受益)のバランスは明らかにOPVにありますが、OPVを使用し続ける限りVAPPの問題も続くことになり、 ここに不活化ポリオワクチン(IPV)導入の最大の意義があるとされています。
 このような背景のもと、世界全体を見るとOPVによる接種をする国が多いものの、先進国ではIPVへの移行を行った国や検討中の国が相当あります。 最初にIPVを複数回投与することによって血中に中和抗体を産生させ、 その後さらに複数回のOPV追加投与によって腸管免疫を与えるIPV/OPV併用方式をとる国もあります。 併用方式の利点は、OPV投与時にはすでに血中抗体が産生されているため、OPVウイルスは腸管で増えるだけで中枢神経へ到達することがなく、 VAPPの発生を95%減少させることが出来る、というものです。 しかし、IPVは注射による投与であり、手技、廃棄物、注射であるがゆえの痛みや副反応などの問題もあります。 ちなみに米国は1997年からIPV/OPV併用方式を導入していましたが、2000年1月からは、原則としてIPV4回接種方式を採用しています。

             <国立感染症情報センターのサイトの文章に加筆して作成しました。>

2.当院における不活化ポリオワクチンの取り扱い
 現状国産の不活化ポリオワクチンはありません。 当院で用意しているのは、フランスのサノフィ・パスツール社のIMOVAXというワクチンです。 世界的に非常に多数の使用実績があり安心して使えるワクチンではありますが、日本国の認可を受けたワクチンではありませんので、 あくまで接種は当クリニックとの合意の上で保護者の自己責任で行うということをご承知ください。定期接種としてのポリオ生ワクチン内服では、ごくまれにポリオ発症がありますがそういったものを含めて関連性が認められれば手厚い保障がなされます。一方、個人輸入不活化ポリオワクチンは副作用などの安全性は非常に高いですが、万が一の健康被害に関しては全く保障されないことを知っておいていただきたいということです。
 接種費用は、1回は4500円と致します。
1.  貝塚市などの市町村では従来より定期接種としてポリオ生ワクチンの内服が行われています。 当院は、このポリオ生ワクチンの内服を過度に危険視するものではなく、より安全なポリオの免疫獲得の手段として 不活化ポリオワクチンを含めたオプションを用意するという立場です。
2. <不活化ポリオ認可後=現在> 
認可された不活化ポリオワクチンが今年の秋から定期接種となる方向です。 しかし、ポリオのウイルスは夏季に流行する可能性が高く、不測の流行に備えるためにも、ポリオワクチンの接種を待つという選択肢はお勧めできません。 経口生1回あるいは不活化2回の接種をしておくべきと考えます。 不活化ワクチンは、生後2か月から接種できます。 現時点で不活化ワクチンのみでの接種を希望される場合は不活化2回を自費で受け、その半年後以降で定期接種での不活化2回の計4回接種をお勧めします。
<不活化ポリオ認可以前> 
経口生ワクチンによるポリオ発症を防ぐためには、生ワクチンを接種する前に、不活化ポリオワクチンを2回接種しておく必要があります。 不活化ワクチンは、生後2か月から接種できます。定期接種として経口生ワクチンを2回接種します。現時点では不活化2回、経口生2回の計4回接種をお勧めします。
◆経口生ワクチンを1回も接種していない場合 :
 8週間隔で不活化ワクチンを2回、半年後に経口生ワクチン1回目、4歳頃に経口生ワクチン2回目の計4回。(当クリニック推奨)
◆経口生ワクチンを1回接種している場合 :
 経口生ワクチン後4週以上空けて、8週間隔で不活化ワクチンを2回、半年後に経口生ワクチン2回目の計4回。
◆経口生ワクチンを2回接種している場合 :
 経口生ワクチン後4週以上空けて、8週間隔で不活化ワクチンを2回の計4回。 (経口生ワクチンによるポリオ発症を防ぐためではありませんが、世界の標準である4回接種を希望する場合のみ)
◆経口生ワクチンを接種しない場合 :
 8週間隔で不活化を2回、1歳から1歳半で3回目、4歳頃に4回目の計4回
3.  当院での接種対象者は原則として高石市、和泉市以南の泉州地域にお住まいの方とさせていただいています。なお、この地域では平成23年7月16日より和泉市の石田こどもクリニックでも接種を始められたとの情報を得ています。